SANSUI TU-7700
AM/FM STEREO TUNER ¥65,000
1974年に,サンスイが発売したFM/AMチューナー。日本では,1963年よ りFMマルチステレオの実
験放送が開始され,さらに1969年よりNHK-FMの本放送が開始されて,FMブームがこの頃起こり,各
社本格的なFMステレオ放送に対応したチューナーを開発していきました。そうした中サンスイも多くのチュ
ーナーを開発していました。TU-999,TU-777,TU-666などの3桁シリーズ,より上級のTU-9500
どを発売し,一定の評価を得ていました。そして,新しい4桁シリーズAU-7700,AU-6600などに対応し
たチューナーの最上級機がTU-7700でした

フロントエンドは,低雑音デュアルゲートMOS FETをRF段に用い,精密周波数直線型4連バリコンと組
み合わせた構成で,1.8μV(IHF)の高感度を実現していました。ダブルチューニング回路により,妨害
排除特性を向上させていました。さらに,超強電界時の混変調に対応して,アンテナアッテネータースイッ
チも装備されていました。



IF部は,フェイズリニア・セラミックフィルター(4素子)を2個,ペアートランジスターによる差動増幅2段,専
用IC3個などから構成されていました。フェイズリニア・セラミックフィルターの採用により,相反する選択度
特性と位相特性の問題を改善し,すぐれた2信号選択度とともに,位相特性,SN比の大幅な改善を実現
していました。また,ディスクリミネーターには,直線性の良い,広帯域のレシオ検波を採用し,諸特性を高
めていました。
MPX部には,経年変化や周囲温度による特性劣化が少ない,高信頼性の専用ICを採用し,全帯域にわた
って高セパレーションを確保していました。

AM部は,専用IC,2素子ヤーマンタイプ・セラミックフィルターなどを採用し,高感度フェライトバーアンテナ
により,高感度。低歪率を実現していました。

電源部は,レギュレーションのよいパワートランジスターを使用し,定電圧回路による安定化電源を全ブロ
ック段へ供給する構成になっており,各ブロック段は安定度の高い動作が確保されていました。


機能的には、オーソドックスながら,後のチューナーには見られないものもあるなど興味深いものがありま
す。バンドセレクターは,AM,FM AUTO,FM MONOのポジションがあり,ステレオ・モノのモード切り
替えも含まれた形になっていました。ステレオ受信時のノイズに対するノイズキャンセラーは,単純な高域
カット方式でなく,高域をカットすることなくノイズをキャンセルする新方式の採用で,10kHz以上の帯域の
再生も可能としていました。局間ノイズをカットするFMミューティングスイッチも装備されていました。この
FMミューティング回路は,高信頼度ICを使用したディスクリミネーター検出型で,従来の入力信号の強さ
を検出してノイズやミューティングレベル以下の信号をカットする方式と異なり,同調周波数とのずれを検
出し,一定歪率以下になるまで音をカットする回路方式が採用されていました。
FMアンテナ端子は,通所の300Ω平衡型の端子に加え,遠距離や雑音の多い場所で使用すると効果
的な同軸ケーブル用の75Ω不平衡端子も装備されていました。音声出力端子は,0~0.775Vまで可
変できるアンプ用の接続端子に加え,0.4V固定のテープデッキ録音用の録音端子が装備されていまし
た。
マルチパスに対しては,マルチパス検出回路が搭載され,シグナルメーターでマルチパスの状態がチェッ
クでき,背面のマルチパス観測端子にオシロスコープを接続すれば,より正確なチェックができるようにな
っていました。
同社のプリメインアンプにマッチングさせたブラックパネルにシルバーのスイッチ,ツマミを配置したデザイ
ンで,周波数表示は,傾斜型の横行スケールで,チューニングメーターも,シグナルメーターにセンター・
チューニングメーターを加えた2メーター構成が採用され,オーソドックスなデザインにまとめられていまし
た。



以上のように,TU-7700は,オーソドックスに性能を高めたチューナーで,同社の主力であるプリメイン
アンプとのペアを想定された精悍なデザインも魅力的でした。使いやすい性能と機能のバランスのとれた
1台でした。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



アンテナアッテネーター・スイッチを装備。
マルチパス観測可能なシグナルメーター。
全段差動増幅回路のFM IF部。
新開発セラミックフィルターを採用。

あらゆる電波状態に対処した
新機能と最新回路,
快適で安定した受信が可能です。

◎高感度FMフロントエンド
◎全段差動増幅回路による,5段リミッター
 を採用したFM IF部
◎FM IF部の選択度,位相特性を改善
◎安定度が良く,高信頼性のFM MPX部
◎FMミューティング回路
◎正確に電波の到来方向が解るマルチパス検出回路
◎ノイズキャンセラ-スイッチ
◎ディスクリミネーター端子
◎全ブロックへ安定化電源を供給

●FMアンテナ入力端子は300Ω(平衡型)と
 75Ω(不平衡型)同軸用端子を装備
●快適なチューニングのできるシグナルメーター
 とチューニングメーターの2メーター方式
●シグナルメーターは入力レベルに比例して
 正確に指示するリニアメーター方式
●出力端子はアンプ用と録音用の2回路
●アンプ用出力端子はレベル調整が可能
●大型アース端子
●予備ACコンセント(最大150W)を装備
●傾斜型ダイレクトディスプレーダイヤル
●重厚なダイカスト製サイドパネル
●AU-7700,AU-6600,AU-5500と
 ペアーデザイン




●規格●

■FM部■

感度(IHF) 1.8μV
全高調波歪率 0.2%以下(モノーラル),0.3%以下(ステレオ)
SN比 75dB以上
選択度 80dB以上
キャプチュアレシオ(IHF) 1.5dB
イメージ・フリクエンシー・リジェクション 75dB以上(83MHz)
IFリジェクション 90dB以上(83MHz)
スプリアスレスポンス・リジェクション  80dB以上(83MHz) 
ステレオセパレーション 40dB以上(1kHz) 
周波数特性(ステレオ) 20Hz~15kHz
アンテナ入力インピーダンス  300Ω(平衡型),75Ω(不平衡型) 



■AM部■

感度(バーアンテナ) 50dB/m
選択度 30dB以上(1MHz±10kHz)
イメージ・フリークエンシー・リジェクション 80dB以上(1MHz)
IFリジェクション 80dB以上(1MHz)



■その他■

出力電圧 0~0.775V(FM100%MOD.可変)
録音出力電圧 0.4V 
定格消費電力 9W
寸法 434W×130H×243Dmm
重量 6.9kg

※本ページに掲載したTU-7700の写真,仕様表等は1974年6月
 のSANSUIのカタログより抜粋したもので,山水電気株式会社に
 著作権があります。したがって,これらの写真等を無断で転載・引
 用等することは法律で禁じられていますのでご注意ください。

 

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