TEAC VRDS-10
COMPACT DISC PLAYER ¥150,000
1992年に,ティアックが発売したCDプレーヤー。ティアックは,もともとテープデッキ,アナログプレーヤーの
ターンテーブルなど,メカトロニクスの分野で優れた技術を生かした機器で評価を得ていたブランドで,CDプ
レーヤーにおいても,1987年にエソテリックブランドを立ち上げ,CDトランスポートのP-1で,VRDS.機構を
初めて世に送り出し,高い評価を得ていました。1990年には,エソテリックブランドでVRDS搭載の一体型CD
プレーヤー第1号としてX-1を発売しました。そして,VRDS-10は,ティアックブランド初のVRDS搭載の一体
型CDプレーヤーとして発売された1台でした。

VRDS-10に搭載されたVRDSは,”Vibration-Free Rigid Disc-Clamping System”の略で,ディスク
と同径で,微妙な角度を持つターンテーブルに,高精度に調整されたクランパーが,ディスク本体を圧着するこ
とで,ディスクのソリや歪みを矯正し,ディスクの不要な振動を排除し,さらにターンテーブルと同角度に微調整
されたピックアップにより,常にピックアップ光軸の中心での微細なピットの読み取りを可能にするメカニズムで
した。




VRDS-10では,ターンテーブルに高質量・高密度のアルミダイキャストを用い,これを支えるブリッジには,新
設計の肉厚補強リブ構造を採用し,このブリッジのメカベースには,ポリエステル・ベースにグラスファイバーと
セラミック粉体を混入成形した特殊高分子素材を新採用していました。この特殊高分子素材は,熱膨張係数
がきわめて低く,温度変化に強いなどの他,ABS樹脂に比べ約2倍の比重を持ち,電気・機械的特性にすぐ
れ,高度な寸法精度も実現されていました。
クランピング・メカニズムには,高い静粛性を誇る高精度ヘリコイドを採用し,さらに,このターンテーブルシス
テム全体を専用サブシャーシでフローティングし,振動モードを極小に抑えていました。
心臓部のモーターには,高精度・高トルクブラシレス・ホールモーターを装備し,ターンテーブルの回転安定性
を高めるとともに,高耐久性を実現していました。
ピックアップのサーボ機構では,アクチューエーターへの駆動電圧を高品位ローパスフィルターにより低減し,
サーボ電流以外の不要なノイズ成分を極小にし,サーボ電流の乱れによるアナログ系への悪影響を抑えて
いました。




全体の構造は,重量級のVRDSメカニズムと電源トランスを,ボディー重心と一致する筐体センターに配置し
たセンターマウント方式を採用し,低重心化と最適なウェイトバランス化を促進して,耐振設計を徹底してい
ました。内部では,アナログ/デジタル系を左右に分離レイアウトし,電気的・物理的干渉を排除していました。
ボディは,ボンネット下層部にトップパネルを設け,二重天板構造とし,二重の天板間には制振効果を高める
不織布をサンドイッチし,これを7点留めによりシャーシ本体を強固に固定していました。シャーシ本体は,8
つのパートに分割したセパレート・ブロック・コンストラクションを採用していました。独立したフロント/リア・シャ
ーシに加え,メカ専用のセンターシャーシを設置し,前後2枚のメカ・フローティング用サブ・シャーシを介して
サイド・シャーシと連結したボトム・シャーシにリジッドに組み上げられていました。フロント/リア・パネルと直結
するセンターシャーシは,梁構造を形成し,ボディートータルの強度を高め,強靱な筐体を確立していました。
フロントパネルには,5mm厚の重量級アルミ材を採用し,必要最小限にとどめたスイッチ類によりパネル開口
面積を抑え,振動・共振による影響を防止した構造になっていました。



D/A変換部には,フィリップスの1ビット系・「ビットストリーム・コンバージョン」が採用されていました。20ビット
8倍オーバーサンプリングデジタルフィルターからの出力は,フィリップス製SAA7350に入力され,これに同じ
フィリップス製のTDA1547=「DAC7」を両チャンネルに2個ジョイントした構成になっていました。これにより
ダブル・ディファレンシャルモードが形成され,完璧な差動回路によりL/R間の干渉,偶数次高調波の打ち消し
も徹底されていました。さらには,S/N比も飛躍的に向上していました。



電源部には,大容量のトランスと厳選されたオーディオ用コンデンサーをはじめとしたディバイスを投入し,余裕
ある回路構成としていました。また,デジタル系とアナログ系の基板を完全に分離・独立させシンメトリカルな回
路設計でL/R回路の干渉を抑えていました。
回路内には,厳選されたパーツが使用されていました。オーディオ専用コンデンサーがふんだんに投入され,抵
抗には精密測定機器などに使用される温度特性50PPM/℃以内,許容誤差±1%未満という,精密級金属皮
膜抵抗を全面採用していました。
また,デジタル/アナログ間の伝送や回路主要部にはバランス伝送を採用し,正相信号だけでなく,逆相信号を
同時に伝送することにより,アースラインへのノイズ混入をキャンセルし,ピュアな信号伝送を実現していました。

以上のように,VRDS-10は,ティアックらしい質実剛健ともいえる作りで,エソテリックの高級機のエキスが投
入されたともいえる1台でした。どちらかというとごつい感じのデザインでしたが,見かけによらずどちらかという
とやさしい穏やかな音で,投入された「DAC7」の色合いを持った音でした。その充実した内容から見ると,コス
トパフォーマンスの高さが感じられる1台だったと思います。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



純音楽仕様ハイエンド・クオリティ
ひとつの素材すら,アーティスティックである。

究極の読み取り精度を実現する
超精密ターンテーブル・メカニズム(VRDS)。

◎世界最高水準のメカニズム精度を誇る
 独創のターンテーブル・メカニズム
 Vibration-Free Rigid Disc-Clamping System


まさに円熟の表現域。ビットストリーム・コンバージョンDAC7
◎無類の音楽表現領域の創出。
 ビットストリーム・コンバージョン「DAC7」。
◎防振設計の大容量電源部と音質最優先
 デジタル/アナログ独立PCB。
◎厳選された高級オーディオ・パーツ群。
 VRDS-10ハイエンド・クオリティの源です。
◎高品位デジタル・カレント。
 ピュア・アース電位を実現するバランス伝送。
◎サーボ電流に起因するノイズ成分を
 極小におさえるCNサーボ。
◎多彩なCD再生を実現する数々の機能。
濃密なるオリジナリティ。スーパー・ハイリジッドチューン・シャーシ
◎センターマウント方式採用
 スーパー・ハイリジッドチューン・シャーシ。
◎5mm厚高密度・重量級フロントパネルと
 アルミムク材トレイトップ・パネル。




●SPCIFICATION●

デジタルフィルター  8倍オーバーサンプリング・20ビットデジタルフィルター 
アナログフィルター  3次バターワース・フィルター 
D/Aコンバーター  ビットストリーム 
消費電力  18W 
外形寸法  442W×149H×331Dmm
重量  10kg 
※本ページに掲載したVRDS-10の写真・仕様表等は1992年10月
 のTEACのカタログより抜粋したもので,ティアック株式会社に著作
 権
があります。したがってこれらの写真等を無断で転載,引用等を
 す
ることは法律で禁じられていますので,ご注意ください。

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