marantz CD-15
COMPACT DISC PLAYER ¥390,000
1992年に,マランツが発売したCDプレーヤー。1980年には,アメリカのスーパースコープ社からオランダフィリッ
プス社にマランツブランドが売却され,日本マランツもフィリップス傘下に入ることとなりました。それ故に,当初からマ
ランツのCDプレーヤーは,ソニーとともにCDのオリジネーターであるフィリップスの技術を積極的に導入して作られ
ており,フィリップスとの共同開発という形で発売されていました。中には,ベルギーのフィリップスの工場で作られ輸
入されていたものもあったほどでした。フィリップスは,前年の1991年に100周年記念モデルとしてLHH-700を発
売し,高い評価を得ていました。このLHH-700をベースに開発され,マランツブランドの最高級機として発売された
のがCD-15でした。



D/Aコンバーター部には,フィリップスの1ビット系コンバーターであるビットストリーム方式D/Aコンバーター「DAC7」
が搭載されていました。それまで,マランツは,TDA1540,TDA1541,TDA1541Aなどのマルチビット系のD/A
コンバーターを搭載したCDプレーヤーを開発・発売していましたが,1991年に初めて1ビット系のD/Aコンバーター
搭載のCD-72を発売しました。その翌年にマランツの1ビット系の2号機として発売されたのがCD-15でした。
CD-15では,DAC7を使いこなすという設計目標で開発されたということで,DAC7の能力を引き出すために,まず
1ビットコーディング用IC「SAA7350」を192fsという最高速度で動作させ,S/Nを高め,また,デジタルフィルター
及び1ビットコーディング「SA7350」部に対し,1ビットコンバーター「TDA1547」部を完全にセパレートした構成と
なっており,独立した基板にマウントし,シールドケースで電磁的に分離し,高周波部によるD/A変換後のアナログ
信号への干渉を抑えていました。そして,もともとディファレンシャル構成となっているTDA1547を2個使用して,ダ
ブル差動構成とし,2個DACの出力がオペアンプで合成される3ステージ構成がとられ,同相ノイズをキャンセルし
て,高S/N化を図っていました。さらに,CD-15に搭載されたTDA1547は音質に関わる重要な3項目をマランツ
で改めて再測定し,より厳しい基準で選別されたもので,「スターマーク」が刻印されていました。

アナログ・アンバランス出力回路には,マランツ独自の「HDAM」を搭載していました。「HDAM」は,Hyper Dynamic
Amplifier Moduleの略で,通常IC化されているオペアンプをディスクリート化したともいえるアンプモジュールで,切手
大ほどの銅ケースの中に,多層基板によるシールド構造がとられたアンプ回路が納められており,熱や振動,電磁波
からの影響を排除しつつ常に安定した性能が発揮できるというものでした。通常のオペアンプの約15~20倍の速さを
誇るスルーレイトとICのスペース効率,熱や振動に対する高い安定度を実現し,音質面でも密度感やスピード感が上
がるという効果がもたらされていました。この「HDMA」は,自社グループ内に通信機部門を持つマランツならではの
もので,持ち前の多層基板技術,表面実装技術,ノイズ対策の技術などを生かした自社開発のモジュールでした。
プリメインアンプPM-99SE,そしてCDプレーヤーCD-15に初搭載された技術で,その後同社のアンプ,CDプレー
ヤー等に広く採用されていくことになりました。



CDドライブメカには,フィリップス独自の1ビーム・スイングアーム・メカ「CDM-4MD」が搭載されていました。バランス
ウェイトを後部に置いてスイングアームを強靱なダイカスト製ベースに組み込んだことによって,外部からの振動の影響
を抑えていました。さらに,サーボ系及びデコーダー用として,新開発のICが投入され,これにより,トレーシング能力が
高められていました。

電源部は,CD-99SE以来の2電源トランス方式が採用されていました。メイン電源には大容量・低漏磁束のトロイダ
ル・トランスを使用し,ノイズ源となる蛍光表示管電源は専用のトランスを搭載し,音楽信号への電気的影響を根本か
ら排除していました。さらに,ディスプレイON/OFFスイッチも装備され,曲数表示のカレンダーを消灯,次にディスプ
レイすべてを消灯する2段階のディスプレイOFFスイッチとなっていました。



内部構造は,電源部,表示部,アナログ・ブロック,D/A変換部などを,それぞれ銅メッキ鋼板で徹底シールドし,聴
感上のS/Nに影響を与える高周波ノイズをシャットアウトし,信号間の相互干渉を防いでいました。
シャーシ・コンストラクションは,銅メッキを施したダイカストシャーシをベースに,天板と底板には3mm厚の鋼板,サ
イドパネル,フロントパネルにはアルミ押し出し材,そして脚部にはアルミブロックを削り出したものを使用したもの
で,振動による聴感上のS/Nの劣化を抑える,高剛性なハイリジッドな構造になっていました。
パーツの面では,高音質のケミコン,抵抗,コンデンサーなど音楽仕様のパーツが投入され,出力端子も最高級と
いえるものが搭載されていました。
出力端子は,アナログ出力がアンバランス出力とバランス出力がそれぞれ1系統ずつ装備され,バランス出力は,
トランスを使用したフィリップス/マランツ・ブランドのオリジナル方式となっていました。デジタル出力は,2系統の独
立した同軸出力端子が装備されていました。

以上のように,CD-15は,マランツのCDプレーヤーの最上級機として,同じグループのフィリップスのすぐれたデ
ジタルオーディオ関連技術と同社のオーディオ技術を融合して作り上げられた完成度の高いCDプレーヤーでした。
ベースとなったLHH-700のフィリップスの音ともいえるビットストリームの音に,1ビットの滑らかさと力強さを併せ
持つ音となっていました。当時,ケンウッドL-D1,ビクターXL-Z900,ラックスD-500X’sⅡなど,各社から一体
型CDプレーヤーの高級機が発売されましたが,その中でもフィリップス/マランツグループならではの音の魅力を
表現した1台として高い評価を受けることとなりました。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



マランツ/フィリップスの
テクノロジーを,フルに投入。
”音楽再生能力”を追求し尽くした,
マランツ・ブランド最高峰モデル。

◎ビットストリーム・コンバージョンの革新形,
 「DAC7」
◎選別に選別を重ねた証し,”スターマーク”
◎高速ディスクリート・アンプ・モジュール
 HDMA採用のアナログ出力回路
◎CDM-4ミニダイカスト・メカニズムを採用,
 タフで正確なプレイアビリティを実現
◎SEシリーズで評価を確立した2電源トラ
 ンスを採用
◎徹底を極めたシールド構造
◎高音質パーツの展覧会さながらの部品選択
◎制振性を徹底的に追求したシャーシ・コン
 ストラクション
◎2段階のディスプレイOFFスイッチを搭載




●主な定格●

チャンネル 2チャンネル
D/A変換方式 1bitリニア/チャンネル 
周波数特性 Line Out(RCA):20Hz~20kHz±0.2dB
Balanced(XLR):20Hz~20kHz±0.2dB
ダイナミックレンジ 96dB
SN比 108dB
チャンネルセパレーション 100dB以上(20Hz~20kHz)
ワウフラッター 水晶精度
Line Out(RCA)出力 2V RMS/150Ω
適合負荷インピーダンス10kΩ以上
Balanced(XLR)出力 3V RMS/150Ω
適合負荷インピーダンス(to RCA):600Ω~50kΩ
               (to XLR):600Ω以上
デジタル出力 Coaxial:0.5Vp-p/75Ω
消費電力 20W
外形寸法 454W×138H×360Dmm
重量 16.8kg
※本ページに掲載したCD-15の写真・仕様表等は1993年10月
 marantzのカタログより抜粋したもので,D&Mホールディングスに
 著作権
があります。したがってこれらの写真等を無断で転載,引用等
 をす
ることは法律で禁じられていますので,ご注意ください。

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