DA-9010の写真
KENWOOD DA-9010
DIGITAL INTEGRATED AMPLIFIER ¥99,800

1988年に,ケンウッドが発売したプリメインアンプ。1986年,ALPINE/LUXMAN・LV-109発売からD/Aコン
バーター内蔵アンプが各社から発売され,一時はかなり多くの機種がありました。ケンウッドは,同年D/Aコンバー
ター内蔵アンプとしては2番目となるD-3300Aを発売し,その翌年の1987年にはDA-1100EXを発売しました。
そして,さらにその翌年に発売されたのがDA-9010で,同社としては最後のD/Aコンバーター内蔵アンプとなりま
した。

DA-9010は,これまでのKA-1100シリーズ等に比べてより強力な出力段が搭載されていました。Pc=120W
のハイパワートランジスターを片チャンネルに4個使用したパラレルプッシュプルのファイナル段が搭載され,ロー
インピーダンスのドライブ能力も高められていました。

DA-9010のパワートランジスターDA-9010の内部

電源部も,従来比で大幅に強化されていました。電源トランスは440VAの容量を持ち,重量6kg(従来は250VA
5kg)の大容量のものが搭載され,15,000μF×2の大型ケミコンとあいまって強力な電源部を構成していました。
前段のAクラス段には,トランスの巻線に特殊なクリーンサイクロンデバイスを追加することによって,高周波領域に
あるデジタルノイズを2次電圧に変換させないというクリーンサイクロン電源が搭載されていました。

アンプ回路で問題になるグランドラインの見直しも行われ,「ピュアシグナル・グランドライン」と称する方式が採用さ
れていました。これは,グランドラインをスピーカー端子の1点でアースするもので,信号を増幅するメイングランドラ
インには,純粋な音楽信号のみが流れ,電源リップルや各種ノイズ成分がすべて専用のグランドラインを流れ,スピー
カー端子で合流することになるため,グランドラインからのノイズの混入が抑えられるという方式でした。
内部レイアウトは,ボリュームをパネルのセンターに配置し,信号経路に沿ったレイアウトが行われ,信号経路の最
短化と各部間の相互干渉の防止が図られていました。同時に,イコライザーアンプ部,プリアンプ部,パワーアンプ部
などを各ブロックごとに整理し,電源トランスや電解コンデンサーなどの電源部は,放熱板により信号系から分離され
るというように,全体として理にかなったレイアウトが行われていました。さらに,ソースダイレクトスイッチをONにする
と,最短信号経路が実現するようになっていました。
また,全体を支えるシャーシは,厚さ1.6mmの鋼板を用いた大型のものが使用され,しっかりとした振動対策が行わ
れていました。

D/Aコンバーターは,8倍オーバーサンプリングデジタルフィルターを組み合わせた18ビットリニア・デュアルD/Aコン
バーターが搭載されていました。また,最大のビット(MSB)とその半分の大きさにあたるビット(2SB)の歪み補正を
行い直線性を高めた「リアルステップ・フルビットD/Aコンバーター」が継承されていました。
さらに,正確なD/A変換のための純度の高いマスタークロックを得るために,ツインクォーツPLLが搭載されていま
した。ツインクォーツPLLはPLLを2段構えにし,一段目で外来ノイズや入力経路による揺らぎを吸収して確実なデー
タ取り込みを行い,二段目ではクォーツ(水晶発振器)を使用したPLLにより,さらに精度の高い時間間隔でデータを
読み取り,高精度なクロックによる高精度なD/A変換を実現しようとするものでした。

DA-9010では,これらに加えて新たに「DPAC(デジタル・パルス・アクシスコントロール)」が採用されていました。
水晶発振器を用いたマスタークロックはきわめて正確なものですが,そのクロックもプリント基板を通過したり,オー
バーサンプリングで周波数変換したりする過程で,プリントパターンの浮遊容量や電源変動,デジタルフィルターの
計算時間のふらつき等の様々な要因によって周波数のゆれ成分(ジッター)が加わり,精度が劣化するという現象が
起こっていました。DAPCは,デジタルフィルターの演算速度まで含めて時間調整を行う方式で,D/Aコンバーターの
直前でジッター成分を吸収するため,D/Aコンバーターの段階では正確無比のクロックで信号レベルを読み取ること
ができ,きわめて高精度なD/A変換が実現されるようになっていました。
また,DA-9010では,D/Aコンバーターとパワーアンプの間をバランス伝送として,信号電流がアースを流れること
をなくし,デジタルノイズのアナログ系への混入を抑えた「グランドアイソレーテッド・バランス伝送」を採用していました。

入力は,アナログ系は,PHONO,TUNER,DBS/VDP1,CD/VDP2,TAPE1/DAT,TAPE2/VIDEOの6系統
が装備され,デジタル系は,光と同軸を合わせ3系統が装備されていました。PHONOはMMだけでなくMCにも対応
していました。入力表示からも分かるようにビジュアル入力も考慮した設計で,ビデオとモニターの出力も装備されて
いました。
DA-9010には,ミューティングやD/A切換,ボリュームなどを操作できるワイヤレスリモコンが付属していました。こ
のリモコン操作のためにマイコンが搭載されていましたが,マイコン制御電流がアナログ信号への影響を及ぼすこと
を防ぐために,マイコン制御出力と信号系の間にフォトカプラーを挿入し,マイコン出力を光伝送することで電気的に
分離していました。
その他,機能的にはミューティング,サブソニックフィルターが搭載され,変わったところでは低域をアップさせて低域
の音量感を上げるバス・インテンシファイヤーというスイッチが装備されていました。

ドP-9010Xとのペア

DA-9010には,ペアを想定したCDトランスポート・DP-X9010が発売されていました。比較的手ごろな価格ながら
しっかりした内容を持ち,デザイン的にもマッチングが図られたナイスペアが構成できるようになっていました。

以上のように,DA-9010は,ケンウッド最後のD/Aコンバーター内蔵アンプであっただけに,高い完成度とすぐれた
コストパフォーマンスを実現していました。解像度と厚みのバランスがとれた音を持つ実力派のアンプでした。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



音楽のために,テクノロジーを磨いた。
◎ピュアシグナル・グランドライン
◎強力電源部
◎強力ファイナル段


デジタルが,音楽のあたたかみを
呼び起こした。

◎デジタルオーディオ・インターフェイスの精度
 が高まってきた。ツインクォーツPLL
◎時間軸の高精度化。新しいテーマを得,
 デジタル技術はハイスピードで進化した。
 DPAC(デジタルパルス・アクシスコントロール)
◎グランドアイソレーテッドバランス伝送
◎8倍オーバーサンプリング18ビットデジタル
 フィルターと18ビット・リニア・デュアル
 D/Aコンバーター
◎高感度リモコンと,光伝送による
 マイコン制御系とアナログ信号系の分離
◎豊富な入出力端子

●信号の流れにそってレイアウトした
  ニューロジカルフローコンストラクション
●厚み1.6mm鋼板を用いた大型シャーシ
●金メッキPHONO端子




●SPECIFICATIONS●



■総合特性■

定格出力
(20Hz〜20kHz両ch動作)
125W+125W(6Ω,THD0.015%)
105W+105W(8Ω,THD0.015%)
ダイナミックパワー
140W+140W(8Ω)
230W+230W(4Ω)
340W+340W(2Ω)
全高調波ひずみ率 20Hz〜20kHz,CD8Ω
 0.015%(105W),0.01%(50W)
1kHz,CD8Ω
 0.0008%(105W)
混変調ひずみ率
0.0035%(60Hz:7kHz=4:1,定格出力時8Ω)
周波数特性 オーバーオール:5Hz〜90kHz+0dB,−3dB(LINE→SPEAKER)
PHONO RIAA偏差:20Hz〜20kHz±0.3dB
S/N PHONO(MM) 78dB(EIAJ),87dB(入力ショート)
PHONO(MC) 73dB(EIAJ),70dB(入力ショート)
DAT,CD,TUNER,AUX,TAPE PLAY 80dB(EIAJ),106dB(入力ショート)  
トーンコントロール
BASS   100Hz±10dB
TREBLE 10kHz±10dB
サブソニック・フィルター
18Hz,6dB/oct
バス・インテンシファイヤー
9dB(20Hz),3dB(100Hz)
ダンピングファクター
150(50Hz)
入力感度および入力インピーダンス
(定格出力時)
PHONO(MM) 2.5mV/47kΩ
PHONO(MC) 200μV/100Ω
DAT,CD,TUNER,AUX,TAPE PLAY
          150mV/47kΩ
PHONO最大許容入力
(PHONO→TAPE REC)
MM:1kHz 200mV/0.008%THD
MC:1kHz  15mV/0.008%THD
出力レベル/インピーダンス TAPE REC(Pin) 150mV/2.2kΩ



■D/Aコンバーター部■

対応サンプリング周波数(自動切換)
32kHz,44.1kHz,48kHz
SN比
110dB(EIAJ)
ひずみ率
0.0015%(EIAJ)
チャンネルセパレーション
110dB(EIAJ)
デジタル入力系
OPTICAL受光電力:−14.5〜−24dBm
COAXIAL:0.5Vp-p/75Ω
DATモニター:0.5Vp-p/75Ω
デジタルアウト(COAXIAL):0.5Vp-p/75Ω



■ビデオ部 VIDEO,VDP-1,VDP-2■

定格入力レベル/インピーダンス
1Vp-p/75Ω
定格出力レベル/インピーダンス 1Vp-p/75Ω



■電源部その他■

電源電圧/電源周波数 AC100V 50Hz/60Hz
定格消費電力 260W(電気用品取締法に基づく表示)
電源コンセント 電源スイッチ連動  1個 100W
電源スイッチ非連動 2個 300W
最大外形寸法 440W×162H×422Dmm
重量 18kg
ワイヤレス・リモートコントローラー
RC-A9010


※本ページに掲載したDA-9010の写真,仕様表等は,1988年10月
 のKENWOODのカタログより抜粋したもので,ケンウッド株式会社に
 著作権があります。したがってこれらの写真等を無断で転載引用等す
 ることは法律で禁じられていますのでご注意ください。

 

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