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Nakamichi 480
2HEAD CASSETTE DECK ¥79,800

1979年に,ナカミチが発売したカセットデッキ。ナカミチは,1958年にナカミチ研究所として発足し,1973年
には独立3ヘッド方式による,世界初の3ヘッドカセットデッキ・「1000」を発売し,カセットデッキの枠を越えたと
感じられるほどの高い性能を実現し,1975年発売の「600」では,2ヘッド構成ながら他社の3ヘッドにも負け
ない程の高い性能を実現するなど,カセットデッキの可能性を大きく高めていったブランドでした。そして,ナカミ
チは,1979年に,480,481,482の「480シリーズ」,581,582,580Mの「580シリーズ」,そして,680
660ZX,670ZX,680ZXの「600シリーズ」と,次々と新製品を発売し,全盛期の始まりともいえる年となりまし
た。そうした数多くの新製品の中で,末弟に当たるベーシックモデルが「480」でした。機能は最低限に抑え,シ
ンプルにまとめ,音質に関わる基本部分を上級機に負けないレベルに仕上げた高性能ベーシックデッキともい
える1台でした。

走行系メカニズムは,上級機「700」等の技術を継承しつつ,新設計となった新しいナカミチ自社製メカニズムで
このクラスでは珍しいクルーズドループダブルキャプスタン方式が採用されていました。フラッター周期の重なりを
さけるために,テイクアップ側とサプライ側のキャプスタンの直径を変えて回転ムラの低減と変調ノイズの改善を
果たしたナカミチ自慢の「周波数分散型ダブルキャプスタン」が搭載されていました。また,鉄の丸棒を削り出し
加工し,ダイナミック,スタティックのアンバランスのないステイブルフライホイールにより,ワウ・フラッターの改善
が図られていました。
さらに,メカシャーシをナカミチ独自の「共振制動型シャーシ」としていました。これは,シャーシの材料として鉄に
比べて減衰特性の大きいアルミニウムアロイを使用し,樹脂成型部品を組み合わせ,モーターその他の回転体
から生じる有害な振動を吸収し,フラッター成分を減少させていました。
走行メカニズムの操作系には,ICロジックコントロールが採用されていました。メカニズムの動作には,当時多く
用いられていたプランジャーではなく,コントロールモーターを用い,ポテンショメーターとコントロールカムによる
ものが採用されていました。プランジャーを用いたソレノイド式と異なり,瞬間的に大電流を食うことなく電源が安
定しており,ゆっくりとテープに接触し,静かな動作が可能なため,テープやメカニズムへのダメージも低減されて
いました。テープエンドでのオートシャットオフも,0.4秒というハイスピードで,メカニズム全体の動作は静かで速
く,洗練されたものとなっていました。

メカニズム系ICロジックコントロールによるメカニズム動作

録音再生ヘッドRP-9E型は,アルプス電気製で,センダストのコア材をもつものでした。保磁力の大きいメタルテー
プに対応して,大きなバイアス電流を流したときもコアが飽和せず,シャープなクリティカルゾーンを形成できるヘッド
で,磁束密度の大きなセンダストの良さを生かした設計となっていました。
消去ヘッドE-8L型は,ナカミチの自社製で,高周波特性のすぐれたフェライトコアと,先端に磁束密度の高いセンダ
ストコアを使用したダブルギャップ型で,損失が少なく,すぐれた消去効率が確保されていました。この消去ヘッドは
他の上級機(後の1000ZXLなども含む)と基本的に同じものでした。

テープポジションは,EX(ノーマル系),SX(クローム系),ZX(メタル系)の3ポジションが装備され,イコライザーは
120μs,70μsに独立して切換えることができるようになっていました。ノイズリダクションはドルビー(Bタイプ)が
装備され,MPXフィルターも装備されていました。
レベルメーターは,−40dB〜+7dBの針式メーターが装備され,テープカウンターは,メカニカル式の3桁というオ
ーソドックスな構成となっており,機能的には,非常にシンプルなものとなっていました。

以上のように,「480」は,ナカミチのベーシックモデルとして,機能的やデザインはシンプルに,しかし音質に関わる
部分にはしっかりとした構成をといった,音質重視のナカミチらしい1台でした。当時の他のメーカーの同価格帯の
デッキに比べ,いかにも素っ気なく見える外観と機能ゆえに,地味な存在となっていましたが,その音質の良さやす
ぐれた性能を知る,オーディオファンには高い評価を得ていたという,知る人ぞ知る実力機という感じでした。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



このデッキは華やかな特長を何も追わずに
良い音だけをひたすら追求した結果です。



●480主な規格●

電源
100V 50/60Hz
消費電力
最大23W
テープ速度
4.8cm/秒
ワウ・フラッター
0.06%以下Wr.m.s. 0.11%以下Wpeak
周波数特性
20Hz〜20,000Hz
総合S/N比
62dB以上 400Hz 3%THD.WTDrms.
(ドルビーNRin,70μs,ZXテープ)
総合歪率
1.0%以下 400Hz 0dB,ZX,EXUテープ
1.2%以下 400Hz 0dB SXテープ
消去率
60dB以上 1kHz 0dB
チャンネル・セパレーション
36dB以上 1kHz 0dB
クロストーク
60dB以上 1kHz 0dB
バイアス周波数
105kHz
入力
ライン:50mV 30kΩ
出力
ライン:600mV(400Hz 0dB)2.2kΩ
ヘッドホン:10mW(400Hz,0dB)8Ω
大きさ
450W×135H×289Dmm
重さ
6.4kg



480Zの写真
Nakamichi 480Z
2HEAD CASSETTE DECK ¥99,800

1981年に,480は,他の「480シリーズ」とともに「480Zシリーズ」へとモデルチェンジされ,480Zとなりました。
価格は2万円上がりましたが,480をベースに,改良強化が行われていました。

主な改良点として,レベルメーターとして,新たにLEDによるピークレベルメーターが搭載されていることがありま
した。−40dB〜+10dBを16セグメントで表示する50dBスケールのピークレベルメーターで,LEDによる表示の
ため明るい表示で,応答性にすぐれ,オーバーシュートもなく,正確な読み取りが可能となっていました。

さらに,ノイズリダクションとして従来のドルビーBタイプに加え,新たに1980年にドルビーラボが開発したドルビー
Cタイプが搭載されていました。
また,±10%の範囲でバイアス電流を調整できるバイアスファインチューニングツマミが装備され,テープの特性
に合わせて,調整できるようになっていました。

480Zシルバーモデル

以上のように,480Zは,ナカミチのベーシックデッキとして,しっかりした内容を受け継ぎつつ,機能的にもより現
代的にブラッシュアップされていました。シンプルながら,音質にすぐれた実力派モデルでした。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



ドルビーCタイプNR,バイアス調整機能
LEDピークレベルメータを新たに装備し,
性能と操作性の飛躍をはかった
480シリーズの第2世代”Z”。


Easy Operation
ソフトタッチボタンによるシンプルな操作。
そして,50dBワイドレンジLEDピークレベルメーターが
正確なレベル表示を約束します。


Dolby C-Type NR
従来のドルビーNR(Bタイプ)に比べ,
高域(2kHz〜8kHz)で約2倍のノイズ改善を実現。
しかも,音質を変化させずに広大なダイナミックレンジを
獲得しました。


Mechanism/Head/Amplifier
音質に有害なフラッター成分を抑え込んだ。
トランスポートメカニズム,ミクロン精度のヘッドテクノロジー,
そして高忠実度アンプが,ゆるぎない基本性能を生みます。




●480Z規格●

トラック形式
4トラック・2チャンネル・ステレオ方式
ヘッド
2(消去×1,録音再生兼用×1
モーター(テープ駆動用)
DCサーボモーター(キャプスタン用)×1
DCモーター(リール用)×1
電源
100V 50/60Hz
消費電力
最大30W
テープ速度
4.8cm/秒
ワウ・フラッター
0.06%以下Wr.m.s. 0.11%以下Wpeak
周波数特性
20Hz〜20,000Hz
総合S/N比
ドルビーCタイプNR on(70μs,ZXテープ)
 68dB以上 400Hz 3%THD,IHF-A wtd rms.
ドルビーBタイプNR on(70μs,ZXテープ)
 62dB以上 400Hz 3%THD,IHF-A wtd rms.
総合歪率
1.0%以下 400Hz 0dB,ZX,EXUテープ
1.2%以下 400Hz 0dB SXテープ
消去率
60dB以上 100Hz 0dB
チャンネル・セパレーション
36dB以上 1kHz 0dB
クロストーク
60dB以上 1kHz 0dB
バイアス周波数
105kHz
入力
ライン:50mV 30kΩ
出力
ライン:600mV(400Hz 0dB)2.2kΩ
ヘッドホン:10mW(400Hz,0dB,Phones Level:High)8Ω
大きさ
450W×135H×289Dmm
重さ
約6.4kg


※本ページに掲載した480,480Zの写真,仕様表等は1980年
 12月,1981年6月のNakamichiのカタログより抜粋したもので,
 ナカミチ株式会社に著作権があります。したがって,これらの写真
 等を無断で 転載・引用等することは法律で禁じられていますので
 ご注意ください。

   
 
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