Technics SU-9400
STEREO INTEGRATED AMPLIFIER ¥148,000
1975年に,テクニクス(現パナソニック)が発売したプリメインアンプ。テクニクスは,1972年に超弩級のコント
ロールアンプSU-10000とパワーアンプSE-10000を発売し,当時世界最高水準のすぐれた特性を実現し
ていました。そこでの技術を継承し,より一般的な価格帯(といっても高価ですが・・・)に「9000番シリーズ」を発
売しました。1974年に第1弾として,コントロールアンプSU-9600,パワーアンプSE-9600を発売し,さらに
チューナーのST-9700ST-9300を発売しました。翌年,弟機としてコントロールアンプSU-9200,パワーア
ンプSE-9200を発売しました。このSU-9200とSE-9200のペアをプリメインアンプとして一体化したモデル
がSU-9400でした。
イコライザ回路は,初段に低雑音PNPトランジスタを用い,出力段は完全コンプリメンタリーSEPP回路で,クロ
スオーバー歪やスイッチング歪の発生を抑えたA級動作の3段直結差動増幅という構成で,ゲインは各段に理
想的な配分が行われ,PHONO1で70dBという高SN比が確保されていました。
PHONO入力は2系統装備され,PHONO1,PHONO2とも,入力インピーダンスが切り換えられるようになっ
ていました。しかも,入力インピーダンスのレジスタンス(抵抗)分のみでなくキャパシタンス(静電容量)分も切換
えられるようになってました。入力レジスタンスは25,50,100kΩの3段切換えが可能で,キャパシタンスは,
highとlowの2段階の切換が可能となっており,カートリッジに合わせて微妙な音質調整ができるようになってい
ました。
メインアンプ部の基本回路は,差動増幅全段直結OCL完全コンプリメンタリー構成となっていました。ペアトラ
ンジスター構成の差動増幅器の次段にエミッタフォロワ回路を挿入し,初段増幅度を上げSN比を向上させると
ともに,プリドライブ段までのインピーダンス整合を適正化して,歪の発生を抑えていました。
プリドライブ段は,負荷としてトランジスターによる定電流回路を設けて定電流動作を行い,クロスオーバー歪の
発生を抑え,低歪みを実現していました。また,プリドライブ段では,ブートストラップコンデンサーを取り除き,低
域の安定度を高めるとともに,出力段の高い安定度も確保されていました。
以上のような基本回路構成と蓄積された技術を生かし,両ch出力82W+82(8Ω)という大出力時にも,高調
波歪率0.08%以下という,すぐれた特性を実現していました。
トーンコントロール回路は,イコライザー回路と同様に,初段に差動増幅,出力段に完全コンプリメンタリーA級
動作のSEPP回路をもつ3段直結方式のNF型で,低歪率を実現していました。トーンコントロールは,1.5dB
ステップ・11接点のロータリースイッチ式で,BASS,TREBLE,さらに左右独立で調整できるようになってい
ました。また,BASS:125Hz,500Hz,TREBLE:2kHz,8kHzの各2段階のターンオーバー切換も装備さ
れ,フラットな特性にすぐにできるトーンディフィートスイッチも装備されていました。
音量調節用のボリュームは,高精度な26ステップ・アッテネーター式ボリュームが搭載されていました。さらに
-20dBのミューティングスイッチも装備されていました。
フィルターは,ローは15Hz・30Hz,ハイは10kHz・15kHzのカットオフ周波数で,-12dB/octという特性の
アクティブフィルターが搭載されていました。
入力は,PHONO2系統,TUNER,AUX2系統の計5系統が装備され,プッシュ式のスイッチで切換えられる
ようになっていました。また,TAPE端子は2系統装備され,相互ダビングもできるようになっていました。
電源部は,電圧増幅段に±42Vの定電圧電源,出力段に大容量トランスと10,000μFのコンデンサーを登
載し,瞬間的な大入力時のトランジェントクロストークの発生を防ぎ,すぐれた特性を実現していました。
出力段の高い電源利用率と±42Vの高電圧に定電圧化された電源により,イコライザ回路では250mVrms
(2mV感度1kHz)の許容入力を実現していました。定電圧化された電源は,1次ACライン電圧の変化にも,
安定した電圧を供給でき,電源を介した干渉を排して,性能の安定性を確保していました。
保護回路は,スピーカー端子の直流電圧を検知して電源をリレーで切り離すスピーカー保護回路が登載され,
これは,信号系にリレーの接触抵抗が入らず,長年の使用にも音質劣化の心配がないテクニクス独自の方
式でした。
さらに,差動増幅の共通エミッタ電源のツェナーダイオードとダイオード,コンデンサー,抵抗で構成したタイミ
ング回路によるショック音防止回路も装備され,電源ON時に発生するショックノイズを防いでいました。
以上のように,SU-9400は,最上級機SU-10000の技術を受けついだセパレートアンプSU-9200,SE-
9200をまさに一体化したという構成で,セパレートアンプと同レベルの性能を持ったプリメインアンプでした。
テクニクスらしく正攻法で性能を追求した設計による,ストレートでしっかりとした音と業務機を思わせるような
精悍なデザインは独自の魅力を持っていました。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
9200シリーズのインテグレート版
・・・圧倒的なCPでお届けします
パワーメータを外し,phonoの入力感度調整
および出力インピーダンス切換えを省略した他は
まったく9200シリーズのインテグレート,同じ性能
を誇ります。
キャパシタンス2段,入力レジスタンス3段切換え
による,幅広いカートリッジ対応。プリ部イコライザ
回路520mVrms(2mV感度)の許容入力,メイン
部82W+82W(8Ω・1kHz・両CH同時駆動)の実
効出力など,最高級プリメインとして高いレベルの
内容をもっています。
●SU-9400定格●
■プリアンプ部■
出力電圧/インピーダンス | 定格:1V/500Ω 最大:10V/500Ω |
入力感度/インピーダンス | Phono1,2:2mV/25,50,100kΩ Tuner:100mV/47kΩ Aux1,2:100mV/47kΩ |
Phono最大許容入力 | 520mV(rms,1kHz) |
全高調波歪率 | 0.05% |
SN比 | Phono:70dB Tuner:90dB Aux:90dB |
周波数特性 | Phono:RIAA標準カーブ±0.25dB Aux:7Hz~110kHz+3,-0dB |
テープモニタ1,2 | PLAYBACK:100mV/47kΩ REC OUT:100mV/500Ω |
トーンコントロール | BASS:50Hz±7.5dB TREBLE:20kHz±7.5dB |
ターンオーバー周波数 | BASS:125Hz,500Hz TREBLE:2kHz,8kHz |
ローフィルタ | 15Hz-12dB/oct 30Hz-12dB/oct |
ハイフィルタ | 10kHz-12dB/oct 15kHz-12dB/oct |
ミューティング | -20dB |
■メインアンプ部■
実効出力 | (片CH,1kHz):110W/110W(4Ω) 83W/83W(8Ω) (両CH,1kHz):103W+103W(4Ω) 82W+82W(8Ω) (両CH,20Hz~20kHz):93W+93W(4Ω) 76W+76W(8Ω) |
全高調波歪率 | 0.08% |
出力帯域幅(両CH,8Ω) | 5Hz~70kHz(-3dB) |
周波数特性 | 5Hz~100kHz(+0,-3dB) |
SN比 | 110dB |
残留ノイズ | 0.3mV |
負荷インピーダンス | (MAINorREMOTE):4~16Ω (MAIN+REMOTE):8~16Ω |
入力感度/インピーダンス | 1V/75kΩ |
■総合■
電源 | AC100V 50/60Hz |
消費電力 | 190W |
外形寸法 | 450W×173H×380.5Dmm |
重量 | 15.6kg |
※本ページに掲載したSU-9400の写真,仕様表等は,1975年2月の
Technicsのカタログより抜粋したもので,パナソニック株式会社に著
作権があります。したがってこれらの写真等を無断で転載・引用等する
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